眩しいシーサイドとピリ辛の山岳路がミックスされた150kmのロングラン。
地元では“アワイチ”と呼ばれて人気の淡路島一周ルートを
よりいっそう楽しむことができるイベントが「淡路島ロングライド150」だ。
なお、今年は最初のエイドステーションの場所が変更されたので注意しよう。
※コースマップ&高低表の詳細はPDFファイルでダウンロードしてご覧ください。
見る者を圧倒する世界最長の吊り橋、明石海峡大橋。淡路島と本州(神戸市)を結ぶこの巨大な橋のたもとからほど近い国営明石海峡公園に「淡路島ロングライド150」のスタートラインが設けられている。夜明け前から公園内の海岸沿いの道路に整列した2,200名のサイクリスト。これから淡路島を一周する150kmのロングライドが始まる。
▲最初のエイドステーション洲本AS。豚汁を準備して参加者を待つ
瀬戸内海越しの東の空が徐々に白み始めたころ、スタートの合図とともにサイクリストが次々に出発する。スタート順は、脚力に自信がある参加者向けのカテゴリーAと、アワイチをゆっくり楽しみたい参加者向けのカテゴリーBに分かれている。どちらを選ぶかはサイクリストが決めるが、走る距離はどちらも約150km。スタートはカテゴリーAから始まる。
スタート地点の国営明石海峡公園は淡路島の北端に位置するが、コースはまず島の東側海岸線、県道76号線を南下する。最初の休憩場所はスタートから約28km先にある洲本AS(エイドステーション)。今年からこの最初のASはいままでの洲本港から100mほど手前の位置に変更されているので注意しよう。 洲本ASまでは市街地や海沿いを走るルートでほぼフラット。最初は集団走行になることも多いので、感覚がなれるまで慎重に進もう。
洲本ASでは、例年ボランティアの方々によって「豚汁」や「おにぎり」などが用意されている。とくにスタート前に朝食をとれなかった人は、時間が許す限り洲本ASで走りの源となるエネルギーをしっかり補給しておこう。
最初のエイドステーションである洲本ASを出発すると、コースは引き続き県道76号線を南下する。しばらく走ると「淡路島ロングライド150」で最初の難関となる立川の峠に遭遇する。平均勾配8%という手強い上り坂。一番勾配がきつい区間では自転車を降りて押し歩きするサイクリストが多くなる。ビギナーは無理して重いギヤで走りがちだが、峠を制覇するにはギヤを落として足に負担をかけないようにマイペースで上るのがポイントだ。峠のピークでは天気さえよければ和歌山方面まで見渡せる。この絶景は峠の達成感をより感動的にしてくれる。
峠を越えると今度は一気にきつい下り坂となる。ちょっとでも気を抜くと思いの外スピードが出てしまう。下りでの事故はダメージも大きいので、ビギナーはとくにこの区間での下り走行には注意したい。 平地まで下りきると、県道76号線は海岸線のすぐそばを走る「南淡路水仙ライン」と呼ばれる区間になる。天候がよければ、まだ夏の余韻が残る9月の強い日差しが透明な海を碧く輝かせる景色がサイクリストの疲れを癒やしてくれる。ただし、海からの風が強いときは防波堤を乗り越える波しぶきが道路まで容赦なく降り注ぐことがある。そんなときは、波をかぶってずぶ濡れにならないよう波の様子を十分確認して走行しよう。
▲灘ASでも地元のボランティアの方々がおしいい補給食でおもてなし。この先には厳しい難所が待っているので、エネルギー補給は十分に!
海岸沿いのフラットな「南淡路水仙ライン」を走り切ると、2番目のエイドステーション、灘ASが現れる(スタートから約59km地点)。
灘ASでは例年ボランティアスタッフが「ちとり絲温(にゅう)そうめん」などの淡路島の名産品や、白玉入りの「おしるこ」などの地元の逸品を用意してサイクリストをもてなしてくれる。この灘ASの先には“アワイチ”最大といえる厳しい難所が待っているので、ここではエネルギーを十分に補充し、難所を越えられるだけの体力を培っておこう。
さて、灘ASから先には灘地野、阿万塩屋町、大鳴門橋の各区間にきつい上りの難所がある。平均勾配は8~11%、最大勾配はなんと15%に達する。ビギナーはとくにギヤの選択に注意し、無駄な体力消耗や足への過度の負担を避けるようにしよう。さらに、通過時間が昼頃になるので晴天であれば気温の上昇も予想される。気温が上がればそれだけ発汗し、体力も奪われる。水分補給とペース配分には十分気をつけたい。
これらの難所をクリアし、見通しのきくところまで高度を稼ぐと、眼下に瀬戸内の美しい海の風景が広がる。かなたには淡路島と四国(徳島県鳴門市)を結ぶ巨大な “大鳴門橋”の雄姿も見えてくる。
“アワイチ”最大の難所をクリアしてしばらく進むと、慶野松原AS(約96km地点)に到着する。このASから先、コースは海岸線を走る県道31号線を北上する。この県道は淡路島の西側に位置するため、夕方になると瀬戸内海に沈む美しい夕日が見られることから「淡路サンセットライン」と呼ばれている。
「淡路島ロングライド150」のサイクリストがこの区間を通過するときはまだ陽が高いので夕日を見ることはできないが、瀬戸内の景色を左手に眺めつつ走るフラットなシーサイドルートは快調なペースで距離を稼ぐことができる。
「淡路サンセットライン」を進み、スタートから115km付近に最後のエイドステーションとして多賀の浜ASが設定されている(夏場は海水浴場として賑わう)。淡路島といえばタマネギの産地として知られているが、多賀の浜ASでは例年、特産の甘い玉ねぎで作ったスープが提供されサイクリストに喜ばれている。また、竹に巻いて香ばしく焼き上げた竹輪も味の良さで好評。
コースは多賀の浜ASから、さらに淡路サンセットラインを北上して島の北部に向かう。進むにつれて、対岸に明石や神戸の町並みがはっきり見えてくる。そして、しばらくすると前方に明石海峡を跨ぐ巨大な明石海峡大橋が眼前に現れる。全長3,911m、橋脚の高さ283m、中央部分(主塔の間)の長さだけでも1,991mもある。近づけば近づくほどそのスケールに圧倒される。
明石海峡大橋の下をくぐればゴールまではあと少し。しかし、「淡路島ロングライド150」はそのまま穏やかにフィニッシュさせてはくれない。早朝からいくつかの峠を越え、150kmあまりを走り続けきたサイクリストに最後の試練が待っている。
それはゴール直前に現れる長い上り坂。一日走り続けたサイクリストは疲労の色が濃い。ビギナーにとっては限界ギリギリかもしれない。そんな状況のサイクリストにとって、勾配こそきつくないもののだらだらと続く坂はかなり応える。しかし、力を振り絞って最後の坂を上り切ればゴールの国営明石海峡公園はもう目の前!
公園に到着し、ゴールラインを通過すれば150kmを走り切ったサイクリストを称えるオフィシャルDJの祝福コール。ゴール後に事務局から交付される完走証が、制限時間内に“アワイチ”を成し遂げたサイクリストの宝物だ。